2020年11月20日



栃木県那須烏山市の
林間住宅地に



1匹のツキノワグマの子どもが
現れました。



。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。



「クマが路上で
クリを食べている」



・・・との情報をもとに



那須烏山市役所職員
那須烏山署



南那須地区
消防本部の隊員らが出動し



獣医師が
麻酔銃を撃ったけれど



うまく当たらず



膠着状態の末
約3時間後



ツキノワグマの子どもは
無事保護されました。



。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。




保護されたのは
2020年に生まれた子グマ



下野新聞によると



クマは体長50~60㎝
体重20㎏



※※その場にいた獣医師の見立て



市の農政課は



「住民に被害が出る前に
捕獲できて良かった」



・・・とのこと



それから
那須烏山市は



山に帰っても



《ひとりで生きていくことができる
月齢でないこと》



・・・を考慮して
引き取り先を探すことにしました。



県内の動物園すべてに
断られ



関東圏の動物園からも
断られ



西日本にまで
距離を伸ばして探したけど



どこからも断られ
途方に暮れた時



那須烏山市は



市の環境課と協働で
野良猫のTNR一斉をしている



犬猫みなしご救援隊の存在を
思いつきました。



。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。



犬猫みなしご救援隊
・・・と言えば



団体名に



わざわざ
《犬猫》と付けておきながら



犬猫以外の動物を
いろいろ保護育成している団体で



クマと同じ
特定動物であるニホンザルも



複数
保護育成している



ちょっと変わった団体です(笑)



・・・が



個体尊重型の考えに基づいた
保護施設の環境の良さは



ピカイチです♪



犬猫みなしご救援隊の
代表である私の元に



那須烏山市から
引き取りの相談がきたのは



2020年12月5日



さすがに相手は
クマですから



理事・社員など総動員で
引き取るや否やの協議をしました。



そして



『やってみるか』
・・・ということになりました。



。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。




決めた以上は
私は必ずやりますから



ツキノワグマの子どもを
助けることに



全力で取り組み



厳しい飼育条件等
数々の難関を突破し



ついに
2020年12月21日



栃木県産ツキノワグマの
子グマが



犬猫みなし救援隊
栃木拠点に到着しました♪



その時・・・私は



九州TNR一斉から
山口光TNR一斉を終え



栃木拠点へ向かうための
準備の最中でした。



「子グマが来ました!」



『そ~か・・・
やっと来たか・・・』



3時間の捕物劇の末
捕獲された子グマは



クマだというだけで



丸々1ヶ月もの間
移動許可すら出ず



那須烏山市役所内で
待機するしかありませんでした。



移動許可が出たのは
捕獲から1ヶ月



子グマは弱ってきていました。



当時の
農政課の課長が言うには



市役所内にいた1ヶ月の間
子グマは緊張したまま



ずっと4本足で
《立ったままの姿勢》を



貫いていたとのこと



私に言わせれば
野生動物ですから当然のこと



野生動物に《安心して》
《寝てもらう》のは



至難のワザですけぇ!




。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。




何度も何度も
しつこいぐらい言っとりますが



日本国は
《国民の身の安全を考慮して》



野生動物を助けるな
野生動物は山に返せ



・・・という法律を作るのなら


なぜ
日本国が責任を持って



弱った野生動物を
助ける施設を作って



そこで保護育成しないのか?



母親とはぐれ
独りになった野生動物の子どもや



明らかに負傷している
野生動物を



ただ単に
「山に返せ」だけでは



自称・動物愛護家の私は
とうてい納得できんです。



国が
ちゃんと保護しないのに



国民に
「助けるな!」・・・はないじゃろ



『国が助けんのなら
私が助ける!』



この国で
動物を助けたいと思うたら



そ~するしかないじゃん!



。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。




栃木拠点で引き取ってから



良さそうなものを
食べさせたり



うちの先生たちの
努力があったりして



どうにか
子グマは元気を取り戻しました。



そして
うちに来て2日後



2020年12月23日



私は栃木拠点で
子グマと初対面しました♪





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初めて会った時の
ツキノワグマの子どもです。



子どもとは言え
さすが・・・クマ・・・



ものすごいオーラーを
放っていました。



怖すぎて
お腹までは見れないので



オスかメスかも
わからない状態でした。



。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。




クマは山の動物だから



当たり前に
マダニは寄生しているハズ



・・・と思って



ブラベクトを付けて
マダニ駆除をしました。



案の定



その夜
マダニがポロポロ落ちました。



落ちたマダニは
しびれているだけで



まだ死んではいないので



《万が一》



同室のカンジや
ひろしに付くと困るので



老眼オバチャンは
苦労しながら



小さなマダニを拾い集めました。






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界面活性剤を混ぜた
水の中に



落ちたマダニを拾い集めました。





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爪は鋭く



絵に描いたようにクマ・・・





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那須烏山市の職員からは



「ドングリとニンジンが好きです」
・・・と聞いていましたが



その通りでした(笑)



子グマの様子を見ていたら
うちのケージより



那須烏山市役所内で
1ヶ月入っていた檻の方が



安心するみたいだったので



『この檻は
借りたままにしよう!』





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山と同じ環境にしよう
・・・と思って



試しに
ワラを入れてみました。



するとすぐに
その上で寝てくれました。



1ヶ月もの間
人間の前で



立ったままの姿勢を貫いていた
子グマが



人間の前で
普通に横になっとる・・・



《寝る幸せ》



これは
何物にも代えがたいものです。







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ワラは
気に入ったようです。



ええじゃん♪ええじゃん♪



《寝床作戦》は大成功♪





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寝床作戦が成功したから
・・・と言って



相手は野生動物
しかも・・・クマ・・・です。



一歩間違えたら
おおごとになります。



そ~なると
ケガをする私たち以上に



可哀そうな結果が
子グマの身に起きます。



私には



子グマを馴らすという考えは
モウトウありませんが



攻撃されない関係性は



きちんと
構築せねばなりません。







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寝床作戦のお次は
《食べ物作戦》を試みました。



子グマに
《いいこと》を覚えてもらいます。



このオバサンは
美味しいものを持っている・・・



そして



このオバサンの手は
美味しいものを与えてくれる



だから



このオバサンの手は
《敵ではない手》



これを完璧に
覚えてもらうまで



私は手から食べさせることを
続けました。





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クマの爪は武器ですが



猫の爪のように
出たり引っ込めたりはできません。



この爪で
引っかかれたら



そりゃ・・・ヤバい・・・と思いました。




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檻の隙間から
手がここまで出てきます。



その手は扁平で
器用そうにないのに



モノをつかむと離しません。
相当な筋力です・・・




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野生動物が
見たこともない人間に捕まって



まさかすぐに



その人間と
生活できるハズがありません。



うちに来てからも
子グマはヒマがあると



檻を
ガリガリ噛んでいました。






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その様子を
よくよく観察すると




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ガリガリやっているけど



実際には
檻を噛んではいないので



私は
ストレス行動だと思いました。



ストレスの原因は
《ここにいること》だと思いました。



・・・となると



できるだけ早く
生活に慣れてもらうしかない



そのために私は



できるだけ快適な暮らしを
提供せねばならん・・・



私の経験上
快適な暮らしの条件の中に



《不妊手術を施すこと》
・・・は必ず入ります。




。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。




犬だって猫だって
鹿だって猿だって



小さい時に不妊手術をすれば



その時点で
精神的な成長が止まり



かわいらしい子どものまま



体だけが
大きくなっていくことになるので



動物と人間が
互いにうまく暮らしていけます。



私にとって
クマは未知の野生動物



動物園のように
クマを本能のまま育てる自信も



私には
1㎜もありませんし



子グマの不妊手術を
早く施すことにしました。




。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。




不妊手術の日



麻酔がかかってから
お腹を見て



子グマは
男の子だとわかかりました。



『名前負けする』



・・・というジンクスを
信じきっている私は



子グマが
優しい子に育ってくれることを願い



あえて
強い名前を付けました。



《カツ》
これが子グマの名前です。



いかにも強そうでしょ♪





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カツの足は



漫画の世界で
描かれているように



まさしく扁平です。



犬や猫のような
しなやかさがないのに



走ると
こっぱ早んですよ・・・






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カツのしっぽも



他の野生動物と同じように
短くて



これで役に立つのか
・・・と思います。





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カツは
まだ子どもだから



キバは生えていませんが



歯は全体的に
人間の歯によく似た感じ



こんな形なのに



いろんなものが
噛みちぎれるわけだから



顎のチカラが
かなり強いんでしょうね・・・







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麻酔が効いている間に



一生に一度っきりの
抱っこをしました。



軽い!
これが私の感想です。



カツが捕まった時



獣医の見立てじゃ
20㎏ということでしたが



実際に
手術の時に体重を測定したら



8㎏しかなかったし



8㎏と言えば
小柄な中型雑種ですもんね



そりゃ~軽いですよね・・・






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去勢手術を終えたカツには
少しずつ



私たち人間と暮らすことを
学習してもらい



同時に私たちは



ツキノワグマに
ストレスを与えないよう



接し方や環境を



いろいろと
改善していきました。








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ポン菓子は大好物で
1粒ずつ食べます。



この写真は
たまたま床にばらまいてますが



指先に
ポン菓子を1粒乗せると



その1粒を上手に
舌で舐め取って食べてくれます。



舌は
やたらと細長く



木の幹の中にいる虫を
食べるために



進化したんだな・・・と思います。






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慎重に慎重を重ねながら
お世話をしていき



カツには毎日



『カツが思うほど
人間は悪くないんよ』



・・・と教えていきました。







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私は
栃木拠点にいる間は



なるべくカツのそばで
寝転がるようにしました。



カツは自分から
私の近くに来るようになりました。





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カツに
なにを食べさせるか



それは大きな課題でしたが



私が子どもの頃に
クマを飼っていたオジサンが



「クマに


肉の味を覚えさせちゃ
ダメじゃけぇ


ワシは
りんごを食べさせとる」



・・・と
言っていたのを思い出し



カツの主食は
りんごに決めました。






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カツを保護してから



いつも
うちの大動物たちに



少し傷ついたりんごを
大量に送ってくれていた



群馬猿ヶ京の車屋さんに



『至急りんごを送ってください!』
・・・とお願いしたり





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山形のまきねぇたちに



『売り物にならないりんごを
大量に送ってください!』



・・・とお願いしたりして



とりあえず
りんごを集めました。



そして
りんごだけでなく



クマが
成長するための栄養を含み



なおかつカツが喜ぶ
《カツごはん》を与えています。






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カツは
小松菜は茎の方が好きだから



葉っぱは
モルモットのチロル



茎はカツ・・・です。





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虫の代わりはいりこ



りんごは
しっかり洗って



頭とヘタを取り除きます。



これはカンジと同じです。




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本には



クマはジャガイモが好き
・・・と書いてありましたが



カツは食べません。



サツマイモやキクイモは
食べます。




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カツは



キャベツやレタス類は
まったく食べません。



果物なら
なんでも大好きです。





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いかにも
女子力が高そうな



バエル《カツごはん》



大根は食べなくはないけど
好きではないので



最後は大根だけが残り
白一色になります(笑)



こんな感じの《カツごはん》を
1日2食



おやつは
ポン菓子とかカステラ類



蜂蜜も大好きだから
舐めさせています。



そして私が
一番大事にしていることが



授乳時間です。



カツは
授乳が必要な月齢でもないけれど



クマも哺乳類ですからね



牛乳を
1日に2回《すいのみ》で



チュ~チュ~飲ませています。



カツは
幸せそうな顔をして



チュ~チュ~飲みます。



そして眠気が起きます。
ひろしと同じです。



市役所にいた時は



牛乳を
お皿で与えていたそうで



そ~ゆ~とこが素人じゃな
・・・と(笑)






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カツのフンは
ニオイはほとんどなく



食べたものが
ちょっとだけ砕かれていて



どちらかと言うと
まんま出る感じです。





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クマの
この半分消化体制が



《クマは森を守る》



・・・と言われているユエンかな
・・・と思います。



鹿や山羊のフンからは



植物が
芽を出すとは思えないけど



クマのフンからは
植物が芽を出す気がしますもんね・・・






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カツの
獣舎の建設が始まりました。



設計は
私と田原くんの合作



施行管理は
いつもの小出の大宮さんです。



『クマの獣舎を作る』
・・・と言ったら



大宮さんは何度も



「クマ?クマ?」
・・・と聞き返していました(笑)






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なるべく自然に近いものを
作りたかったので



あえて屋根を付けず
日が差して風が吹き



雨の日は
雨も降る遊び場にしました。



基礎の周りを
コンクリートで囲い



オール鉄の超・重い獣舎
フェンスのスパンは5㎝



木にも
少しだけ登れるように



鉄板で返しを作りました。







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南京錠の鍵は
中からも



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外からも使える仕様




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外から開閉できる扉は



年をとっても
ラクラク動かせるように



滑車もつけてます。




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ロープを巻き付けるフックです。





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もちろん
水道も完備です。




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み~くんと
電気工事の打ち合わせ



電灯だけでなく
エアコンもカメラもつきます。





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床面を水洗いして
乾かないことを想定し



寝床となる獣舎は
左右に2室作りました。




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このように使わない方は
扉を閉める感じです。





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獣舎は
ほぼ完成しました。




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チラッと
このブログに書きましたが



2月のよき日に



遊具を作る材料を購入し
遊具を作りました。





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遊具は《職人T》が
構想して作り上げました。



私の的確な指示は
『カツが退屈しないもの』



この一言です(笑)






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カツが
ここで退屈にならないよう



楽しい遊具を考えてくれたな
・・・と感謝しています。







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栃木県からは



クマの獣舎として合格!
・・・をもらいました。




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いよいよ
カツが獣舎デビューする日



山羊たちも



となりに誰が来るか
楽しみじゃね♪





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この時点でも



カツは
まだまだ小さな子グマです。



クマは3年で
成獣になるのだそう・・・





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まずは獣舎に
慣れてもらわなきゃ・・・



いきなり出したりせず
少しずつ少しずつ






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やがて
寝床となる小部屋から



デビュー



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クマは
こんな体型ですけど



羨ましいぐらい
運動能力は高いです。





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やっぱり登りますね!




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手と足とクチを使って
ウマいこと登ります。



・・・が
下りるのは苦手なようです。





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やっぱり
下りるのは苦手・・・




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1回30分の練習から始めて



何日か経ってようやく
遊ぶようになりました。





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・・・でも獣舎では
まだ緊張するみたいで



獣舎から戻って
部屋に入った方が



ボクは落ち着くそう・・・




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だってここが
ボクのおうちじゃもん・・・




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今でもカツは
昼間だけ獣舎で過ごし



夜は室内で寝ています。



私は
それでええと思うとります。




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カツは



まだ1歳にもならない
子グマです。



こんな小さな子グマを
獣舎を建てたからと言って



突き放すことは
私にはできません・・・




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噛んで遊べるように
消防ホースを巻いてみたり



いろいろ
バージョンアップしながら



私たちも
カツと共に成長しています。






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まんまるいカツの後ろ姿



お腹がいっぱいだと
カツはおとなしく



消化に専念している感じです。




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こ~して見ると
大きく見えますが





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チビデブのオバチャンと
比べても



ほら・・・まだ小っちゃいじゃろ♪





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カツを助けようと・・・



カツを
どうにか生かしてやりたいと・・・



お世話をしながら
懸命に行き場を探した



那須烏山市の農政課の
課長は



明日4月1日から
異動だそうで



先日



最後の挨拶に・・・と
カツに会いに来てくれたそうです。






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私たちは
それ相応の覚悟を持って



カツを
引き取ることを決めました。







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私たちの目の前で
へそ天で




平気で寝るカツは
まだ小さく



それだけ



私たちの責任は
重く大きいということですが





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危険な動物である
特定動物のツキノワグマの



子グマのカツを



引き取って4ヶ月が経ち
ここにきてようやく



日ごろより
ご支援いただいている皆さまに



カツの
《落ち着いた様子》を



ご報告できる運びとなったこと



私は心底
嬉しく思っております。





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カツは
特定動物のクマですが



差別も区別もなく
私たちと同じ命です。



どうか温かく



カツの成長を
見守っていただければと思います。



2021年3月31日



特定非営利活動法人
犬猫みなしご救援隊
中谷百里




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